こんにちは。国語専門塾 国語ゼミの編集部です!
小論文を書いて添削を受けたら、「具体性がない」「もう一歩踏み込んで」と返ってきた。そこで体験談を足したり、難しそうな言葉に置き換えたりしてみたけれど、何がよくなったのか自分でもわからない。
そんなときは、文章を長くする前に、読み手に説明していないことが残っていないかを確かめてみてください。
例えば、「意識を高める必要がある」「周囲と協力すべきだ」という提案。方向性は伝わっても、誰が何をするのか、その取組でなぜ状況がよくなるのかは、まだ読み手に見えていないかもしれません。
この記事では、解決策を論じる小論文を取り上げ、「誰が」「誰に」「何をするか」「なぜ改善につながるか」という四つの問いで、答案を書き直す方法を紹介します。
「具体性がない」と言われたら、まず指摘された箇所を見る
具体性が足りないといっても、直す場所は答案によって違います。
主張の意味が曖昧なのかもしれません。根拠となる事例が必要なのかもしれません。あるいは、提案した取組の中身や、その効果につながる理由が説明されていないのかもしれません。
例えば、「教育を充実させる」と書いた文に指摘がついているなら、次の二つは分けて考えたいところです。
| 確かめたいこと |
書き直す方向 |
| どのような問題が起きているのか伝わらない |
課題文や設問に沿って、困っている状況を示す |
| 何をすればよいのか伝わらない |
誰が、誰に、どのような教育や支援を行うかを説明する |
「例えば」と体験談を付け足しても、提案の中身が曖昧なままなら、その部分は解決しません。指摘がどこを指しているかわからなければ、「問題の説明と、提案の説明のどちらを補えばよいですか」と添削した先生に聞いてみましょう。
以下では、解決策の説明が足りない場合に絞って考えます。課題文の要約や理由の説明だけを求める問題に、無理に解決策を加える必要はありません。
短い例で、何が書かれていないかを確かめる
次の練習問題で考えてみましょう。
練習問題
ある学校の食堂に、生徒から「ご飯の量が多く、食べ切れないことがある」という意見が寄せられています。生徒が無理なく食べ切れるようにするために、食堂の運営者はどのような工夫をするとよいでしょうか。具体的な取組と、その取組によって期待できる効果を述べなさい。
※設問と以下の答案は、説明のために作成した架空の例です。実在の学校の状況や、大学の入試問題を示すものではありません。
この問いに、次のように答えたとします。
食べ物を大切にする意識を高め、食べ残しを減らすべきだ。
食べ残しを減らしたいという考えは伝わります。ただ、この設問では「ご飯の量が多く、食べ切れない」という状況が示されています。意識を高めるだけで、その困りごとに対応できるでしょうか。
また、何をすれば意識が高まるのかも、この一文ではわかりません。「具体性がない」という指摘を受けたときは、こうした説明の抜けを探していきます。
解決策を具体化する四つの問い
四つの問いは、答案を決まった四段落に分けるための型ではありません。提案の中身と理由を確かめるための観点です。すでに設問で示されていることは確認し、足りない説明を補います。
1.誰が取り組むのか
「社会全体で取り組む」「周囲が支える」と書いたときは、実際に動く主体を考えてみましょう。学校なのか、自治体なのか、企業なのか。それによって、できることも変わります。
今回の問題では、主体は「食堂の運営者」と示されています。生徒に残さないよう呼びかけるだけでなく、運営者が提供の仕方をどう変えられるかを考える必要があります。
食堂の運営者は、……する。
主語が決まると、その主体にできる取組かどうかも確かめやすくなります。複数の人が関わる案なら、「協力する」とまとめるだけでなく、それぞれの役割を説明します。
2.誰に働きかけるのか
同じ取組でも、誰に向けて行うかで内容は変わります。
今回注目したいのは、「ご飯の量が多いと感じる生徒」です。全員の量を一律に減らすと、今の量でちょうどよい生徒や、もっと食べたい生徒には合わない可能性があります。
ご飯の量が多いと感じる生徒が、……できるようにする。
このように対象を絞ると、誰のどのような困りごとに対応するのかが明確になります。人に直接働きかけない提案なら、「何を変えるのか」「その変更で誰の困りごとが軽くなるのか」と考えても構いません。
3.何をするのか
「意識を高める」「支援する」「環境を整える」は、まだ取組の方向を示した表現です。そこから、読み手が実際の行動を思い浮かべられるところまで説明します。
今回なら、次のように書けます。
盛り付ける前に、ご飯の量を選べるようにする。
「食べ物の大切さを教える」という案を考える場合も、何を伝え、どう伝えるかは説明したいところです。ただし、この設問の困りごとは「量が多い」ことです。取組を詳しく書くだけでなく、その困りごとに対応しているかも確かめてください。
4.なぜ改善につながるのか
取組が具体的でも、「それによって問題が解決する」と結ぶだけでは、間の説明が抜けてしまいます。
取組によって何が変わり、その変化がどう改善につながるのかを考えてみましょう。
今回の例なら、量を選べることで、生徒が自分の食べられる量に合わせて受け取れます。そのため、量が多いことによる食べ残しを減らすことが期待できます。
食べられる量に合わせることで、量が多いことによる食べ残しを減らすことが期待できる。
ここでは、どの原因に対応する案なのかを絞って説明しています。好みに合わないなど、別の事情による食べ残しまで、同じ方法ですべてなくせるとは言っていません。
四つの問いは、提案を点検する観点です。四段落で書くという指定ではありません。
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書き直すと、提案と理由がつながる
四つの問いを踏まえて、先ほどの一文を書き直してみます。
書き直す前
食べ物を大切にする意識を高め、食べ残しを減らすべきだ。
書き直した例
食堂の運営者は、ご飯の量が多いと感じる生徒が、盛り付ける前に量を選べるようにする。食べられる量に合わせれば、量が多いことによる食べ残しを減らすことが期待できる。
変わったのは、文章の長さだけではありません。取組の主体、対象、行動、改善につながる理由が書かれ、読み手が提案を検討できるようになっています。
専門用語や珍しい発想を加えなくても、説明は具体的にできます。まず、書き手の頭の中にだけあったつながりを、文章にすることを考えてください。
設問に合う取組を考え、誰が何をするかと、なぜ改善につながるかを補います。
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実施する条件や、残る問題も確かめる
提案と理由がつながったら、実際に行うときに困ることがないかも考えます。
ご飯の量を選べるようにすると、注文や盛り付けに時間がかかり、窓口が混む可能性があります。その場合は、選べる量を少数の区分にする、まず一つの窓口で試す、といった工夫が考えられます。
先ほどの答案に、条件や確かめ方を加えるなら、次のように書けます。
食堂の運営者は、ご飯の量が多いと感じる生徒が、盛り付ける前に量を選べるようにする。食べられる量に合わせれば、量が多いことによる食べ残しを減らすことが期待できる。混雑を避けるため、選べる量を少数の区分にし、まず一つの窓口で試す。食べ残しの状況と提供にかかる時間を確かめ、運営に支障がないかを見ながら方法を調整する。
これは考え方を示す解答例であり、唯一の正解ではありません。字数が短ければ、取組と理由を優先し、条件の説明は必要なものに絞ります。
どの答案にも費用や人手の話を足せばよい、ということでもありません。その案を実行するうえで大きな障害になりそうな点を選び、どう対応するかまで考えることが大切です。
数字や体験談を増やすだけで、具体的になるとは限らない
「具体的に」と言われると、数字、固有名詞、体験談を加えたくなることがあります。それらを使うときも、何の説明を補うのかを確かめてください。
効果を示す数字には、根拠が必要
「まず一つの窓口で試す」は、自分が提案する実施方法です。一方、「この方法で食べ残しが半分になる」は、効果についての主張です。今回の資料から、そのような数値は確認できません。
数値を入れるなら、資料にある事実なのか、自分が提案する条件なのかを区別します。効果の大きさが不明なときに、もっともらしい数字を作る必要はありません。
自分の体験だけで、ほかの人にも当てはまると決めない
「私はご飯を少なくしてもらい、残さず食べられた」という体験は、取組の意味を説明する材料にはなります。ただ、その一例だけで、すべての生徒の食べ残しがなくなるとは言えません。
体験を使う場合は、その経験が何を示し、今回の設問とどう関係するのかを書きます。なお、今回の記事で挙げた体験文も説明用の例です。自分の答案では、実際に経験していないことを体験談として書かないでください。
難しい言葉に置き換える前に、行動を説明する
「包括的な支援体制を整備する」と書いても、誰が何をするかが説明されていなければ、読み手の疑問は残ります。用語を使うこと自体が悪いのではありません。その用語によって何を言おうとしているのか、自分の言葉で説明できるかを確かめましょう。
家庭学習では、一段落だけを書き直してみる
添削された答案が戻ってきたら、まず「具体性がない」と指摘された一段落を選びます。最初の答案は消さずに残し、隣や別の紙に書き直してください。
- 設問の要求を確認する。 何を改善するための提案なのか、対象や条件を短くメモします。
- 四つの問いを当てはめる。 誰が、誰に、何をするか、なぜ改善につながるか。すでに書けている部分と、説明がない部分を分けます。
- 足りない説明を補う。 書いていない項目を機械的に埋めるのではなく、読み手が疑問に感じそうな部分を直します。
- 取組と効果の間を確かめる。 「この取組によって何が変わるのか」を一文で説明できるか試します。
書き直した後は、「支援するとだけ書いていたので、誰に何をするのかを加えた」など、変えた点を短く残します。次の問題で同じ表現を使いそうになったとき、確かめる場所がわかります。
保護者の方が手伝う場合は、代わりに解決策を考えるより、「その取組は誰がするの?」「そうすると、何が変わるの?」と聞いてみてください。本人の説明から、まだ言葉になっていない部分を確かめられます。
小論文全体の準備と書き直しについては、「小論文は『書く前』で決まる。独学でつまずかないための五つの手順」も参考にしてください。資料の事実から意見につなぐところで迷う場合は、資料型小論文の記事で、事実と解釈の分け方を確認できます。
書き直しても、どこが足りないかわからないときは
主体や行動を書き足しても、その取組が問題に合っているか、期待する効果につながるかは判断しにくい場合があります。「具体性」の指摘の背景に、課題文の読み違いや、設問とのずれがあることも考えられます。
相談するときは、問題文、最初の答案、添削のコメント、書き直した答案をそろえ、「この取組で、ここが変わると考えた」と説明してみてください。どこまで考えられているかが伝わり、確認すべき点を絞りやすくなります。
国語ゼミでは、1対1の完全個別指導で、小論文の添削に加え、ディスカッションと書き直しを行っています。提案の中身や理由を講師とのやり取りで確かめ、設問に応じた説明へと整えていきます。
次の答案では、「なぜ改善するか」まで説明する
解決策の具体性を確かめるときは、誰が、誰に、何をするかを明らかにし、その取組で何が変わるのかを説明します。
書き足すこと自体を目的にせず、設問に答えるために必要な説明を選びましょう。今ある答案の「意識を高める」「協力する」「支援する」という一文から、読み手にまだ伝えていないことを探してみてください。