こんにちは。国語専門塾 国語ゼミの編集部です!
グラフを見て、「こちらの割合が高い」「この項目が低い」と説明することはできる。けれども、その後に自分の考えを書こうとすると、手が止まってしまう。ようやく書けても、資料とはあまり関係のない意見になってしまう。
資料型小論文で、こうした難しさを感じていませんか。
意見につなぐときは、資料から確認できる事実と、自分が考えた解釈や提案を分けることが大切です。そのうえで、どの事実を受けて、なぜそのように考えたのかを説明します。
この記事では、練習用のグラフと答案例を使い、読み取りから意見へ進む方法を紹介します。ただし、すべての資料型問題で意見を書くわけではありません。最初に確かめたいのは、設問が何を求めているかです。
まず、設問がどこまで求めているかを確かめる
同じグラフが示されていても、問い方が変われば、答案に書く内容も変わります。
設問の例と答案で行うこと
| 設問の例 |
答案で行うこと |
| 「図から読み取れる特徴を述べなさい」 |
数値や比較から確認できる特徴を説明する |
| 「このような違いが生じる理由を考察しなさい」 |
違いを確認し、その背景について根拠を示しながら考える |
| 「資料を踏まえ、改善策についてあなたの考えを述べなさい」 |
資料のどこに着目したかを示し、改善策とその理由を説明する |
読み取りだけを求める設問に、「だから学校はこうするべきだ」と対策を加える必要はありません。一方、改善策まで求められているのに、数値の説明で終われば、問いの一部が残ってしまいます。
書き始める前に、設問の「特徴を述べる」「理由を考察する」「改善策を論じる」などに線を引いてみてください。複数の指示があれば、それぞれに答える準備をします。
この記事では、資料の特徴を述べたうえで、工夫や改善策について意見を書く問題を取り上げます。
数字の前に、何を調べた資料なのかを見る
グラフを読むときは、棒の長さや数値に目が向きやすいものです。ただ、数値が何を表すかを取り違えると、その後の説明もずれてしまいます。
まずは、次の点を確認しましょう。
資料を読むときの確認点
| 確認すること |
見る場所・内容 |
| 対象 |
誰についての資料か。調査人数は何人か |
| 時点 |
いつの調査か。同じ時点の比較か、時間による変化か |
| 指標と単位 |
人数・割合・回数のどれか。「利用した」は何を意味するか |
| 比較の条件 |
同じ質問や基準で比べているか。注記に制約はないか |
例えば、「本を借りた人の割合」と「一人が借りた本の冊数」は違います。割合が高い集団であっても、一人あたりの冊数まで多いとは限りません。
また、調査対象が一つの高校なら、その結果だけで「日本の高校生全体も同じだ」とは言えません。図のタイトル、軸、凡例、注記を確認し、説明できる範囲を押さえます。
練習用のグラフで、言えることと言えないことを分ける
次の例で考えてみましょう。
以下の学校・調査・数値・設問・答案は、説明のために作成した架空のものです。実在の入試問題や調査結果ではありません。
A高校で、同じ時期に各学年100人へ「最近1か月に、学校図書館で本を借りましたか」と質問したとします。次の図表は、「借りた」と答えた生徒の割合です。各学年は別の生徒であり、同じ生徒を追跡した調査ではありません。
練習用の架空データ。同じ時期の学年比較であり、同じ生徒の経年変化ではありません。
画像をタップすると拡大できます(新しいタブで開きます)。
A高校の学年別貸出利用(練習用・架空データ)
| 学年 |
最近1か月に学校図書館で本を借りた生徒の割合 |
| 1年生 |
60% |
| 2年生 |
40% |
| 3年生 |
25% |
練習問題
図から読み取れる特徴を述べたうえで、A高校で学校図書館の本を借りる生徒を増やすには、どのような工夫が考えられるか。あなたの考えを400字以内で述べなさい。
この資料からは、1年生の割合が最も高く、3年生が最も低いことが確認できます。1年生と3年生の差は35ポイントです。割合どうしの差なので、「35%減った」とは書きません。
一方、次のことは、この資料だけでは不明です。
- 3年生の割合が低い理由。
- 生徒が学校図書館以外で本を借りたり、買ったりしているか。
- 1年生の生徒が進級したとき、借りる割合がどう変わるか。
つまり、「上の学年ほど割合が低い」という比較はできますが、「学年が上がるにつれて同じ生徒が本を借りなくなった」という変化は確認できません。「3年生は読書をしない」と言い換えることもできません。
ここを丁寧に分けると、資料に書かれていない原因を、いつの間にか事実として扱うことを防げます。
三つの答案で、説明から意見へのつなぎ方を比べる
① 数値の説明で止まっている答案
A高校で最近1か月に学校図書館の本を借りた生徒は、1年生が60%、2年生が40%、3年生が25%だった。1年生が最も高く、3年生が最も低い。両者には35ポイントの差がある。
ここまでの読み取りは、資料に沿っています。ただ、設問は「どのような工夫が考えられるか」も聞いています。その部分がまだ書かれていません。
続きを書くなら、数値をさらに並べるよりも、どの状況を変えるために、誰が何をするのかを考えます。
② 資料にない原因を決めつけている答案
3年生が学校図書館で本を借りないのは、スマートフォンの使いすぎが原因である。学校がスマートフォンの使用を制限すれば、本を借りる生徒は増えるはずだ。
今度は提案まで書けています。しかし、この資料には、スマートフォンの使用時間も、本を借りない理由も示されていません。原因についての説明が、資料から離れています。
「原因かもしれない」と表現を弱めるだけでも、十分とはいえません。その可能性を考える理由や、確かめる方法がなければ、思いつきを付け加えただけになってしまうからです。
この例なら、まず生徒に利用しない理由を尋ね、その結果に応じて方法を考える、という方向に直せます。原因がわからない部分を残したままでも、設問に答えることはできます。
③ 事実を押さえ、条件を示して提案する答案
A高校で最近1か月に学校図書館の本を借りた生徒は、1年生60%、2年生40%、3年生25%であり、3年生が最も低い。ただし、別々の学年を比べた調査なので、同じ生徒が進級して本を借りなくなったとはいえない。また、利用しない理由も、この資料だけではわからない。私は、学校が各学年の生徒に利用しない理由や希望する利用時間を尋ね、その結果に応じて貸出方法を見直すことが必要だと考える。例えば、借りたい時間と開館時間が合わないという回答が多ければ、図書館の担当者と生徒が相談し、希望の多い時間帯に短時間の貸出を試す。担当者の負担を確かめながら実施し、利用状況と生徒の意見をもとに続け方を考えたい。原因を決めつけず、実際の利用のしにくさに対応することが、貸出利用を増やすために大切である。
これは、先ほどの設問に対する400字以内の解答例です。唯一の正解ではありません。
この答案では、割合の違いを示した後、資料では原因までわからないことを確認しています。そのうえで、「時間が合わない」という回答が多い場合の工夫を挙げています。誰が行うか、どのような条件で行うかも書かれています。
「開館時間が原因だ」と断定せず、確認した内容に応じて提案する形にしている点に注目してください。学校図書館で本を借りる生徒を増やす、という設問の目的にもつながっています。
なお、①と②はつまずきを示す短い例です。長い答案ならよいという比較ではありません。確かめたいのは、問いへの答えがそろっているか、主張を支える説明があるかです。
「事実・解釈・提案」に分けると、つながりを確かめやすい
自分の答案を見直すときは、一文ずつ、どの役割を持っているか確かめてみましょう。
事実・解釈・提案の整理
| 役割 |
この例で書けること |
| 事実 |
学校図書館で本を借りた3年生の割合は25%だった |
| 解釈・仮説 |
借りたい時間と開館時間が合わない可能性は考えられるが、資料からは確認できない |
| 提案 |
理由や希望時間を調べ、時間の不一致が多ければ貸出時間の変更を試す |
「事実」は、資料のどこからわかるかを指させる内容です。「解釈・仮説」は、その背景や意味について自分が考えたことです。「提案」は、状況に対して何をするかという意見です。
大切なのは、三つの役割を同じ調子で断定しないことです。資料では確認できないことを「明らかである」「原因である」と書いていないか、見直してください。
ただし、答案を必ず三段落に分ける必要はありません。字数配分も一律ではありません。これは考えを整理するための見方であり、実際の構成は設問に合わせて決めます。
家庭学習では、一問の答案をこう見直す
最初から何本も書き直す必要はありません。今使っている問題集や過去問から、資料を踏まえて意見を書く問題を一つ選んでみてください。
- 設問の指示と、対応する文を結びつける。 「特徴」と「工夫」を求められているなら、答案のどの文がそれぞれに答えているか確認します。
- 資料の根拠がある文に印をつける。 数値だけでなく、調査対象や比較の条件も合っているか見ます。
- 自分で考えた文には、理由や条件があるか確かめる。 「なぜそう考えるのか」「どの場合に実施するのか」が説明されているか確認します。
- つながりが弱い一段落だけを書き直す。 原因を断定した文や、提案が唐突に出てくる部分から直します。
書き直した後は、「何を変えたか」を一言で残しましょう。「資料にない原因を断定していたので、確認すべきことと条件付きの提案に分けた」と説明できれば、次の問題でも注意する場所がはっきりします。
保護者の方が手伝う場合は、答案の結論を決めるより、「この文は資料のどこからわかる?」「その工夫で、誰がどう利用しやすくなる?」と聞いてみてください。判断がつかなければ、疑問を残して講師に確認すれば大丈夫です。
小論文全体の準備や書き直しの進め方は、関連記事の「小論文は『書く前』で決まる。独学でつまずかないための五つの手順」でも扱っています。
自分では、つながりを判断しづらいときは
「事実と意見は分けたけれど、この解釈は無理がないだろうか」「提案を書いたものの、資料と結びついているのかわからない」。こうした疑問は、答案だけでなく、そのときの考え方を説明しながら確認したいところです。
相談する際は、問題文・図表・最初の答案・書き直した答案をそろえると、どこで迷ったかを伝えやすくなります。点数だけを尋ねるより、「この数値から、この原因を考えてよいのか」と質問を具体的にしてみてください。
国語ゼミでは、1対1の完全個別指導で、小論文の添削に加え、ディスカッションと書き直しを行っています。資料をどう読んだか、その読み取りからなぜその意見になったかを、講師とのやり取りで確かめていきます。
次の一問では、資料の事実と自分の考えを分けてみる
資料型小論文で意見につなげるときは、まず設問が求める内容を確かめ、資料から確認できる事実を押さえます。その後で、自分の解釈や提案が、どの事実とどうつながるのかを説明します。
わからない原因を、無理に決めつける必要はありません。何を確かめ、どのような条件なら工夫が有効なのかを考えることも、意見を具体的にする方法です。
次に解く一問では、資料を説明した文と、自分の考えを書いた文に、それぞれ印をつけてみてください。その二つがつながっているかを確かめるところから、書き直しを始めましょう。