こんにちは。国語専門塾 国語ゼミの編集部です!
総合型選抜の出願が始まりました。それに合わせて増えるのが、「志望理由書が書けない」というご相談です。多くの受験生がこれを文章力の問題だと考えています。しかし下書きを読ませていただくと、原因はたいてい別のところにあります。書き始める順番が、逆になっているのです。
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こんにちは。国語専門塾 国語ゼミの編集部です!
総合型選抜の出願が始まりました。それに合わせて増えるのが、「志望理由書が書けない」というご相談です。多くの受験生がこれを文章力の問題だと考えています。しかし下書きを読ませていただくと、原因はたいてい別のところにあります。書き始める順番が、逆になっているのです。
手が止まっている受験生の下書きは、多くが同じ場所から始まっています。「大学で〇〇を学びたい」——学びたいことから書き出しているのです。
一見、正しく思えます。志望理由書なのだから、志望する理由、つまり学びたいことを書く。自然な発想です。
けれども、この順番で書き始めると、必ず同じ壁に当たります。「なぜそれを学びたいのか」が説明できないのです。そして説明できないまま字数を埋めようとするので、志望校のパンフレットに書かれている特徴を並べることになります。実習が充実している、少人数教育である、著名な先生がいる——。
具体例を見てみましょう。次は、実際によく見かける型の下書きです。
私は貴学の看護学部で、地域看護について学びたいと考えています。高校の授業で地域包括ケアという言葉を知り、興味を持ちました。貴学は地域と連携した実習が充実しており、私の学びたいことに合っていると考え、志望いたしました。
この文章は、どこかが壊れているわけではありません。日本語として破綻していませんし、志望校の特徴にも触れています。それでも評価されにくい。理由ははっきりしています。読んだ人の中に、疑問が残るからです。
論理的な文章とは、読んでいて疑問がわいてこない文章のことです。これは小論文でも面接でも変わりません。志望理由書も同じで、うまい表現が並んでいるかどうかではなく、読み終えたときに疑問が残らないかどうかで評価されます。
そして、この疑問は「学びたいこと」から書き始めるかぎり、埋まりません。学びたいことは、本来もっと手前にある何かの結果として出てくるものだからです。手前を飛ばして結果から書くから、根拠のない主張になる。文章力の問題ではないというのは、こういう意味です。
志望理由書に必要な要素は、突き詰めると二つです。
一つ目は、一貫性。「将来どうなりたいか」と「大学で何を学びたいか」が、一本の線でつながっていることです。この線が通っていれば、読み手の疑問は自然に消えます。逆に、どれだけ字数を使っても、線が通っていない文章は最後まで「で、結局なぜうちなのか」という疑問を残します。
二つ目は、フック。これは後の節で説明しますが、簡単に言えば、あえて全部を書き切らずに、読み手に「もっと聞きたい」と思わせる仕掛けのことです。
順番としては、まず一貫性です。フックは、一貫性のある文章ができてから考えれば足ります。
そして一貫性を作るために必要な作業が、将来像からの逆算です。ここからは、実際の手順を追っていきます。
最初にやるのは、志望校を一度忘れることです。そのうえで、次の問いに一行で答えてください。
あなたは将来、どうなりたいですか。
ここが最も難しい、という人が大半です。実際、多くの受験生がこの問いの前で止まります。立派なことを書かなければいけない気がして、手が動かなくなるのです。
しかし、立派である必要はありません。必要なのは、具体的であることだけです。
上の二つが悪いのは、内容が立派でないからではありません。誰にでも当てはまってしまうからです。この一行から、あなたが何を学ぶ必要があるのかを導けません。導けないということは、次の手順に進めないということです。
現時点では、仮の答えで構いません。志望理由書を書き上げるまでに何度も書き直すことになります。大切なのは、抽象的なまま先に進まないことです。
一行が書けたら、次はこう問います。
そうなるために、自分には何が足りませんか。
知識、技術、経験。何でも構いません。思いつくかぎり書き出します。
先ほどの例で考えてみます。「退院後の高齢者を訪問看護の立場から支えたい」なら、足りないものは何でしょうか。
ここで手が止まる場合、多くは手順1の一行がまだ抽象的です。「人の役に立ちたい」からは、必要なものが出てきません。一つ戻ってください。
続いて、手順2で挙げたものを学ぶには、どんな環境が必要かを考えます。この段階でも、まだ志望校の名前は出しません。
条件の形で書くのがポイントです。「〇〇大学は実習が充実している」ではなく、「在宅の現場での実習ができること」と書く。志望校の名前を先に出すと、その大学の特徴に合わせて条件を後付けすることになり、一貫性がまた崩れます。
ここでようやく、志望校の資料を開きます。手順3で書き出した条件と、志望校で実際にできることを突き合わせてください。
このとき使うのは、パンフレットのキャッチコピーではありません。シラバス、カリキュラム表、実習要項です。「〇〇論」という科目名が、自分の書いた条件のどれに対応するのか。実習先の種別はどうなっているのか。ここまで見ると、書ける内容が一気に具体的になります。
そして、四つの手順が埋まったところで、初めて文章にします。冒頭の下書きを、この順番で書き直すとこうなります。
訪問看護師として、退院後も自宅で暮らし続けたいと考える高齢者を支えたいと考えています。祖母が退院後に生活の立て直しに苦労した際、訪問看護師の方が薬の管理だけでなく家族の相談にも応じていたことが、この進路を考えるきっかけになりました。
そのためには、病棟での看護技術に加えて、生活の場を前提に判断する視点と、他職種と連携する方法を学ぶ必要があると考えています。貴学を志望したのは、〔カリキュラム上の具体的な根拠〕があり、この二点を学生のうちに経験できると考えたためです。
長さも語彙も、最初の下書きと大きくは変わりません。それでも読後感が違うのは、将来像から学びたいことまでが、一本の線でつながっているからです。読み手の中に「なぜ」が残りません。
なお、〔 〕の部分は、必ずご自身で志望校の資料を確認して埋めてください。ここを他人の文章や口コミで埋めると、面接で答えられなくなります。
一貫性のある文章ができたら、最後にフックを考えます。
志望理由書は、それ単体で完結する書類ではありません。多くの場合、面接とセットで評価されます。面接官は、提出された志望理由書を手元に置いて質問します。つまり、志望理由書は面接の台本を自分で書いているようなものです。
だとすれば、聞かれたい話をあえて書き切らずに残しておく、という戦略が成り立ちます。たとえば先ほどの例で、祖母の退院後の話を一文だけにとどめておく。すると面接官は「そのとき、具体的にどんなことがあったのですか」と尋ねたくなります。自分が最も語れる話題を、相手から引き出させることができます。
ただし、条件が一つあります。自信を持って答えられることだけを、曖昧に残す。これに尽きます。深く聞かれると困ることを曖昧にしておくと、面接で確実に掘られます。フックは、話を広げられる場所にだけ仕掛けてください。
ここまで内容の話をしてきましたが、書き上げる前に必ず戻ってほしいのが、大学が指定している設問です。
出願書類の名称も、問われ方も、大学によって異なります。「本学を志望する理由を述べなさい」なのか、「入学後の学修計画を含めて述べなさい」なのか、「高校時代に力を入れたことと関連づけて述べなさい」なのか。問われていることに正面から答えていない書類は、内容が良くても評価されません。設問の要求を分解してから書くという原則は、小論文とまったく同じです(→ 小論文は「書く前」で決まる。独学でつまずかないための五つの手順)。
令和9年度大学入学者選抜実施要項(令和8年5月27日付け文部科学省高等教育局長通知)により、総合型選抜は入学願書の受付を2026年9月1日以降、合格発表を2026年11月1日以降と定められています。学校推薦型選抜は、入学願書の受付を2026年11月1日以降、判定結果の発表を2026年12月1日以降とされています。
ただし、これは全体の枠組みです。実際の出願期間、提出書類の名称と種類、字数制限、提出方法、締切は大学ごとに異なり、年度によって変更されることもあります。必ず志望校が公表する最新の募集要項でご確認ください。
締切が迫っている方もいると思います。その場合でも、いきなり文章を書き始めないでください。先に文章を書いて、あとから筋を通そうとするほうが、結果的に時間がかかります。
今夜やることは、次の四つを箇条書きで埋めるだけです。三十分で終わります。
文章にするのは明日で構いません。この四つが埋まっていれば、文章化は作業になります。埋まっていない状態で書き始めるから、何時間かけても進まないのです。
ここまでの手順は、一人でも進められます。実際、多くの受験生が自力で書き上げます。
ただし、一つだけ、自分では判定できないことがあります。自分の文章に一貫性があるかどうかです。
理由は単純で、書いた本人の頭の中では、すでにつながっているからです。手順1から手順4までを自分で考えた人にとって、将来像と志望校は当然のように結びついています。だから、文章の上でその線が省略されていても、本人には見えません。読み手が「なぜ」と思う箇所が、書き手には見えない——これは論理の飛躍が起きる仕組みそのもので、小論文でもまったく同じことが起こります。
ですから、どこかの段階で、事情を知らない誰かに読んでもらう工程が必要になります。そのときお願いすべきなのは、「うまく書けているか」という感想ではありません。「読んでいて、どこで疑問がわいたか」です。その疑問が、埋めるべき箇所です。
そしてもう一つ。志望理由書は、書き直すことで良くなります。一度書いて、疑問がわいた箇所を聞き、埋めて、また書く。この往復を何回できるかが、最終的な完成度を決めます。締切から逆算して、書き直す時間を残しておいてください。