要差し替え
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こんにちは。国語専門塾 国語ゼミの編集部です!
過去問を解かせて、記述の答案が返ってくる。読んでみる。けれど、何が足りないのかがわからない。
模範解答と見比べても、表現が違うだけなのか、内容が足りないのかの判断がつかない。結局、記述だけ丸つけを飛ばしてしまう——九月に入ると、このご相談が増えます。
先に結論をお伝えします。ご家庭で記述を添削する必要はありません。併塾中のご家庭でできる、国語のフォローでも、保護者による添削はおすすめしないこととして挙げました。その考えは変わりません。
ただし、採点の仕組みだけは知っておいて損がありません。添削するためではなく、返ってきた答案や塾の指摘が読めるようになるためです。
模範解答と見比べる方法が、行き詰まる理由
記述の丸つけで、まずするのは模範解答との照合です。しかしこれは、たいてい途中で止まります。
理由は単純で、記述の正解は一通りではないからです。同じ内容を指していても、言葉の選び方も語順も書き手によって変わります。模範解答と一字一句そろうことは、まずありません。
では、どこまで違ってよいのか。ここで判断がつかなくなります。
もちろん「どの答案でもよい」わけではありません。基準はあります。ただしその基準は、模範解答の文面ではなく、その裏側にあります。
記述は「文章」ではなく「要素」で採点されています
中学入試の記述は、多くの場合、部分点方式で採点されます。答案全体の印象で点をつけるのではなく、入っているべき内容のまとまりを、一つずつ数えていく方式です。この一つひとつを、ここでは「要素」と呼びます。
たとえば十二点の記述であれば、要素が三つ設定され、一つ入るごとに四点、といった具合です。採点する側は、模範解答と見比べているのではありません。要素の一覧を手元に置いて、答案の中にそれがあるかどうかを確認しています。
ここから、二つのことが導かれます。
ひとつは、日本語がぎこちなくても、要素が揃っていれば点が入るということ。文章の巧拙は、採点の主軸ではありません。
もうひとつは、その裏返しで、読みやすくても要素が欠けていれば点は入らないということです。
ご家庭で記述を読んだときに感じる「上手・下手」と、実際の得点が食い違うのは、この二つが理由です。
要素が揃っていても、0点になることがあります
要素と並んで、もうひとつの軸があります。設問の条件です。
こちらは要素と違い、満たしていなければ内容にかかわらず点にならない性質を持ちます。よくあるのは次の四つです。
- 字数 ——「五十字以内」を一字でも超えれば、その時点で対象外になります
- 文末 ——「なぜか」と聞かれたら「〜から。」、「どういうことか」なら「〜ということ。」、「気持ちを説明しなさい」なら「〜気持ち。」で閉じる
- 指定語句 ——「『対比』という語を用いて」と指定されていれば、使わなければなりません
- 使う範囲 ——「本文中の言葉を使って」なのか「自分の言葉で」なのかで、書き方が変わります
要素は積み上げ、条件は足切り。性質がまったく違う二つの軸が、同時に働いています。
要差し替え
図版:要素と条件の二軸
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条件を満たさない答案は、要素がいくつ揃っていても採点の対象から外れます。
三つの答案を並べてみます
言葉だけではつかみにくいので、例を一つ作りました。解説用の短い文章と設問です。
翌朝、健太は玄関で足を止めた。傘立てに、昨日まではなかった赤い傘が一本、差してある。妹のものだ。
昨日の朝、妹は「傘、貸して」と言った。健太は貸さなかった。自分の傘は一本しかなかったし、妹の学校は歩いて五分だ。それくらい濡れても平気だろうと思った。
けれど夕方、妹は髪まで濡れて帰ってきた。健太の顔を見ると、何も言わずに自分の部屋へ入っていった。
赤い傘は、母が買ってきたのだろう。健太はしばらくそれを見ていたが、何も言わずに玄関を出た。
問 傍線部のときの健太の気持ちを、五十字以内で説明しなさい。(十二点)
※本文・設問・答案は、解説のために作成したものです。実在の入試問題ではありません。
この設問の要素を、仮に三つ置きます。
- 要素A(四点) 昨日、自分が妹に傘を貸さなかったこと
- 要素B(四点) そのせいで妹を濡らし、傷つけてしまったと気づいていること
- 要素C(四点) 申し訳なさから、妹に声をかけられずにいること
では、三つの答案を見ます。
答案①
妹が濡れて帰ってきたので、かわいそうだと思う気持ち。(二十六字)
字数も文末も問題ありません。日本語としても読みやすい。ご家庭で読めば「ちゃんと書けている」と感じる答案です。
しかし要素で見ると、AもCもありません。Bについても、「かわいそう」は一般的な同情であって、自分がその原因だという認識が入っていない。厳しく見れば、この答案は要素Bにも届いていません。
得点はゼロから四点のあいだにとどまります。
答案②
傘を貸さなかったせいで妹を濡らしてしまい、申し訳ないが、今さら謝れずにいる気まずさ。(四十三字)
A・B・Cがすべて入っています。字数も文末も条件どおり。
文章としては答案①のほうが滑らかかもしれません。それでも、こちらが満点です。
答案③
健太は妹に傘を貸さなかったことを後悔し、妹に申し訳ないと思いながらも謝ることができずにいる。赤い傘を見て、妹がもう自分を頼らないのだと感じている。(七十三字)
内容は最も豊かです。要素は三つとも入っていますし、本文の読み取りとしては答案②より深い。
ですが、五十字以内という条件を超えています。この一点で、採点の対象から外れます。
三つ並べると、ご家庭で評価が高くなりやすいのは①と③で、実際に点になるのは②です。印象で読むと、順番が逆になる。これが、記述の丸つけが行き詰まる本当の理由です。
それでも、ご家庭での添削はおすすめしません
ここまで採点の仕組みを書いておいて矛盾するようですが、ご家庭で採点していただく必要はありません。理由は三つあります。
第一に、基準を知ることと、基準で採点することは別の作業です。実際の入試問題では、要素の設定も配点も学校が内部で決めており、ほとんどが公表されていません。上の例のように要素を三つ立てられるのは、あくまで解説用に設問を作ったからです。市販の解答例に付された配点も、出版社の推定であることが少なくありません。
第二に、親子だと感情が入ります。同じ説明を三度繰り返したとき、他人なら保てる冷静さが、親子では保ちにくくなります。
第三に、塾の指導と食い違います。お通いの塾には塾ごとの書き方の指導があります。ご家庭で別の基準を持ち込むと、お子さんの中で手順が二重になります。
後ろの二つは、併塾中のご家庭でできる、国語のフォローで詳しく書いたとおりです。
では、知っておくと何が変わるのか
添削しないのであれば、採点の仕組みを知る意味はどこにあるのか。三つあります。
返却された答案が読めるようになります。「もっと詳しく」という指摘は、たいてい要素の不足を指しています。「まとめすぎ」も同じです。逆に「ここは書かなくていい」は、条件の側の話であることが多い。指摘の言葉そのものより、それがどちらの軸を指しているかがわかると、意味が変わってきます。
お子さんの失点の型が見えてきます。要素が足りないのか、条件で落としているのか。この二つは、必要な訓練がまったく違います。条件の読み落としは比較的短期間で直りますが、要素の抽出は積み上げが要ります。同じ「記述ができない」でも、残り時間の使い方が変わります。
無用な不安が減ります。模範解答と違う答案を見て「これは間違いなのだろうか」と気を揉む時間が、そのまま消えます。
そして、ご家庭でしていただくことは、これまでと変わりません。丸つけの前に一問だけ選んで、「どうしてこの答えにしたの、本文のどこを見た?」と聞く。評価はせず、説明しきるまで待つ。それで十分です。
まとめ
- 記述は文章の印象ではなく、要素を数えて採点されます。日本語がぎこちなくても、要素が揃えば点は入ります
- 要素とは別に、字数・文末・指定語句といった条件があります。こちらは満たさなければ、内容にかかわらず対象外になります
- ご家庭で読んだときの「上手・下手」と実際の得点が食い違うのは、この二軸で採点されているからです
- ただし、ご家庭で添削する必要はありません。基準を知ることと、基準で採点することは別の作業です
- 知っておくと変わるのは、返却答案や塾の指摘の読み方、そしてお子さんの失点がどちらの軸に寄っているかの見当です
記述の失点が要素の側にあるのか、条件の側にあるのか。ここまでは、答案を数枚並べれば見当がつきます。その先——どの要素が、なぜ拾えていないのか——は、本文の読み方まで遡らないと出てきません。